いつもあたりまえにあると思っていたものが、一瞬で奪われた事実。東日本大震災は私たちにさまざまな問いかけを突きつけ、日本中が「何をすべきか？」にゆれていました。画集『水彩で描く美しい日本』発刊のお話をいただいたのはそんな時でした。私は思いました。「画集発刊は、まさに今だから必要だ。それは多くの人々にとって、原点を探し、道筋をさし示す道標のひとつになってくれるに違いない」。（中略）風景を描くという行為は、ひとりの画家の「普遍的な存在への愛」であり、そして、「私にはこう見えた」という世界にただ一つの決意表明です。今あらためて風景画を発表することの高潔さを感ぜずにはいられません。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（「『水彩で描く美しい日本』発刊に寄せて」〈岩手県出身・仙台市在住　画家　古山拓〉より抜粋」）